脚本家橋本忍さんの『複眼の映像』に震える|伊丹万作監督の金言から『七人の侍』の驚異の創作過程まで、奇跡のつながりを読む

脚本家橋本忍さんの『複眼の映像』に震える|伊丹万作監督の金言から『七人の侍』の驚異の創作過程まで、奇跡のつながりを読む

昔の映画を見ている方なら橋本忍さんはご存知と思いますが、天才って本当に信じられない歩みをしているものです。

橋本さんは映画のシナリオを初めて読み、「これくらい書ける」と思い至って書いたシナリオを、監督でもあり優れた脚本を書く伊丹万作監督に送り、唯一の弟子となりました。そして、会社員をしながら書いたデビュー作となる脚本が黒澤明監督の『羅生門』で、いきなりベネチア国際映画祭で金獅子賞(グランプリ)を取り、そのまま黒澤映画の常連脚本家となって『七人の侍』までの4年で脚本家として頂点に立ったという、信じられない方です。

私も映画で橋本さんは存じ上げておりましたが、黒澤映画時代はすでにベテランの人だと思っていたのですけど、まさか『羅生門』がデビュー作だったと知って驚愕しました。驚いたなんてものじゃないです。

映画『羅生門』は芥川龍之介さんの小説『藪の中』と『羅生門』が合体した内容です。橋本さんは『藪の中』をシナリオ化していたのですが、それを黒澤さんが読み、映画化したいと橋本さんに声をかけたという経緯。羅生門の話は今と過去の出来事が入り乱れ、なおかつ検非違使による取り調べの場面で登場人物たちが遭遇した事件のことについてみんな違うことを言い、それを聞いた僧侶と薪割りが羅生門で途方に暮れているという話で、組み立てが非常に難しそうな脚本です。

橋本さんは、この今と過去が入り乱れるシナリオの書き方がとてもうまく、松竹映画の『切腹』や『夜の鼓』などで同じような作りをした作品を手掛けています。

この方の脚本経歴のうち、1950年代の作品は私はほとんど見ています。それらの映画を振り返ると、「先がどうなるかわからず、グイグイと引き込まれる、いつの間にか沼に引き込まれている」といった感じの感想を持ちます。このブログで紹介が追いつかないほど橋本さん脚本の映画を見ておりますが、『複眼の映像』の中ではあまり大変だったり苦労をして書いた素振りも見えないので、やっぱり天才なんだなという言葉が出てきてしまいます。

もちろん、黒澤監督作品の脚本制作スタイルで有名な、複数人で書き上げるという合宿中のエピソードは、私にしてみたら逃げ出したいと思うくらいのことが書かれていましたけど、橋本さんは結構軽い感じで言っているのですよね。そこがすごいなと感じます。

また、この本の中では脚本合宿中の黒澤監督とのやりとりや、黒澤さんの書き方やこだわりなども書かれているのですが、黒澤さんは本当にやばいです。『七人の侍』の一人一人のキャラクターの詳細すぎて、聞いているだけで悲鳴を上げるほどの人物像を分厚いノートに延々と書き、すごい脚本を書く橋本さんでもその姿には驚いています。また黒澤監督は「ドボルザークのニューワールドを『七人の侍』の原作にしたい」と言ったりして、気持ちはわかりますが、やはり現場ではこうした普通の感覚ではない出来事の連発で、それについていけるのもすごいと思います。

本当、もう何度も「すごい」という言葉しか出てきませんが、橋本忍さんは1950年に突然現れた聖徳太子みたいな、尋常ではない感覚を持った方という認識です。

『複眼の映像』の本もご本人が書いておりますが、映画を見ているように面白いです。最初は恩師の伊丹万作さんのエピソードですが、伊丹さんも昔の映画を知っている人からすると、とんでもなくすごい人なのですね。伊丹さんの話で「原作モノに手をつける場合、どんな心構えが必要か」というエピソードが出てきます。そこで最初に掴まれてしまったのですが、さすが伊丹万作さんでした。勉強になりました。伊丹万作さんの言われたことに興味のある方は『複眼の映像』をお読みになってください。900円で買えます。

橋本さんはご本人の才能がまずあることが前提ですが、伊丹万作さんから佐伯清監督、黒澤明監督へつながっていくのが見えない神の糸のような、奇跡的なつながりのようなものも感じます。

私が言うとあまりすごく聞こえなかったかもしれませんし、文章も上手くないので、橋本さんの『複眼の映像』を存分に伝えられなかったかもしれませんが、大変面白い本で、勉強にもなる本、ということは確かです。

◾️『複眼の映像』橋本忍 文春文庫
 https://amzn.to/4yr4Gn0

最新情報をチェックしよう!

時代劇の最新記事8件

>松元美智子クリエイティブブログ💖公式

松元美智子クリエイティブブログ💖公式

松元美智子 1996年少女漫画雑誌「ちゃお」デビュー/漫画家/イラストレーター/3DCGゲームアニメーター/書籍執筆/投資家/Python/UE5/最新刊「少女マンガの作り方」/Web「松元美智子クリエイティブブログ♡公式」で過去の漫画や制作に役立つ情報毎日投稿中/法政大学経済学部経済学科通信教育部生/メンタル心理カウンセラー

CTR IMG