1942年時代劇映画「鞍馬天狗 黄金地獄」文明開化時の勘定方の衣装に驚き
最近、鞍馬天狗にハマっているのですが、
嵐寛寿郎さん主演で約30年間にわたり、約40本の映画が公開されていました。
人気作品だけあって、細かな演出や時代考証なども丁寧に反映されているようですが、
時代考証をしっかりやりすぎた結果、時々驚くような演出が見られます。
その一例が、「鞍馬天狗 黄金地獄」で描かれていた文明開化時の
とある職場内の風景です。
勘定方という財務担当者の衣装が、スーツにちょんまげ姿だったのです。
脇役なので名前もなく、財務報告の場面で登場するだけの役なのですが、
この姿で快活に作業し、受け答えや所作もしっかりしているため、
面白さが倍増し、記憶に残るキャラクターとなりました。

文明開化と日本人の服装の変化
明治維新後の日本は近代化を進めるとともに、西欧文化が急速に普及し、
日本人の服装も、それまでの和服から洋服へと変わっていきました。
時代劇の中で文明開化を描く作品は他にもありますが、
洋服姿のキャラクターは、一般的に「ざんぎり頭」(短髪)で登場することが多いです。
有名な例では、新選組を題材にした作品の土方歳三が挙げられます。
新選組時代は隊服(和服)にちょんまげ姿、
函館戦争の頃にはフランス式の軍服にざんぎり頭、
というように、和服と洋服で明確に区別されて描かれることが一般的です。
比較的新しい時代に制作された時代劇では、
和服と洋服の姿がはっきりと分けられていることが多いと思います。
しかし、昔の時代劇映画は時代考証に厳しく、
古い映画ほど舞台や小物、衣装など、
その時代に存在したものしか扱わなかったといわれています。
「鞍馬天狗 黄金地獄」における文明開化の描写
そのため、「鞍馬天狗 黄金地獄」でも時代考証がしっかり反映されており、
この作品は文明開化後の横浜港が舞台となっています。
当時の横浜は、日本の中でも特に西欧文化と日本文化が入り混じる場所でしたが、
それが映画の中で見事に再現されており、
「よくこの舞台が存在したな」と思うほど、文明開化の様子がうまく表現されていました。
(撮影場所は岡山県の港にあるドックです。)
しかし、その時代考証の徹底ぶりが、現代から見ると
ちょっと面白く感じられる演出になってしまったのが、
スーツ姿にちょんまげの勘定方でした。
スーツにちょんまげ!?日本人の服装の変遷
日本人は服装に対して無頓着なところがあるので、
実際にこういう人がいたのだろうなと想像できます。
この格好をしていても、本人はおかしいとは思わなかったでしょうし、
周囲の人も特に違和感を持たずに受け入れていたのかもしれません。
とはいえ、勘定方のいる職場の職員全員がスーツにちょんまげだったわけではなく、
袴姿にざんぎり頭、スーツにざんぎり頭、
紋付袴にちょんまげ姿など、さまざまなスタイルの人物が入り乱れる職場風景が描かれていました。
和服から洋服へと移り変わる文明開化後の職場の様子を、
しっかりと描いている点は素晴らしいと思います。
今回は、スーツにちょんまげ姿というユニークな登場人物に注目しましたが、
文明開化時の職場風景をここまで丁寧に描いた時代劇映画やテレビドラマは珍しいため、
今回クローズアップしました。
「鞍馬天狗 黄金地獄」の視聴方法
こちらはDVD販売のみで視聴可能です。
「鞍馬天狗 黄金地獄」は1942年に公開された「鞍馬天狗横浜に現る」が元のタイトルです。
1953年に再編集、公開されたのが「鞍馬天狗 黄金地獄」です。
嵐寛寿郎さんの鞍馬天狗が活躍する「鞍馬天狗 黄金地獄」については、
また改めて書きたいと思います。
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