『悔いなしカチンコ人生』に詰まった東映時代劇の裏話!佐々木康監督の絶対的個性とメロドラマへのこだわり

『悔いなしカチンコ人生』に詰まった東映時代劇の裏話!佐々木康監督の絶対的個性とメロドラマへのこだわり

映画監督・佐々木康さんの自伝『悔いなしカチンコ人生』。

松竹時代は現代劇メロドラマ、東映時代には市川右太衛門さん(『旗本退屈男』)、片岡千恵蔵さん(『赤穂浪士』ほか)、月形龍之介さん(『水戸黄門』)、そして大川橋蔵さん(『銭形平次』)をはじめとする東映系の映画とテレビ時代劇の幅広いジャンルを手掛けた監督。生涯で映画168本、テレビ約500本を監督されたという本数は驚異的です。

私には大変馴染み深い監督さんなのですが、その佐々木監督の『悔いなしカチンコ人生』は、映画監督の著書の中では一番最初に購入した本です。最初は図書館で、とても分厚くて大型の映画のスチール写真がたくさん掲載されている佐々木監督の著書を目撃し、読んだことがきっかけでしたが、そちらの本のほぼ文章部分だけを本にしたのが『悔いなしカチンコ人生』です。

映画監督の著書には特徴があり、構成、展開、語り方、雰囲気など、自ら監督した映画とほぼ同じだということ。当然かもしれませんが、映画、本と媒体は変わっても中身(本人)は変わらないというのが、表現者の隠しきれない絶対的個性だと思います。佐々木監督作品はジャンルが変わってもとにかく華やか、明るい、派手、わかりやすい。そして全体が音楽のように流れるように展開していく。芸術的ではなく、どちらかというと大衆向けですが、出身が富豪なので品の良さが隠せません。東映ができる時に松竹からほぼ引き抜きで声をかけられ、東映の専属監督第1号となった方で、大変華やかな映画を作る方なので、東映の華やかな役者さんたちとはピッタリの方だと思います。

佐々木監督の映画はわかりやすいと書きましたが、著書もとてもわかりやすく、最初から最後までスラスラと2時間くらいでパーっと読めてしまうのですが、東映時代劇の歴史を見るようでもあり、東映時代劇をよく知っている私には本当に何度読んでも飽きない映画監督の本です。佐々木監督らしい内容で、監督の映画を見ているような本でもありますが、監督した映画の裏話も少し聞けたりするので映画を見るよりも楽しかったりします。

松竹時代はメロドラマを中心とした現代劇しか監督していないので、時代劇中心の東映では「入社後は勉強してから時代劇を撮影したい」と言ったそうなのですけど、時は映画・時代劇の黄金期。そうもいかずにいきなり時代劇の撮影になったと本の中で書かれていましたが、私は佐々木監督作品は時代劇から見たので、準備もできずに撮影したとは言っていましたが「監督、そんな感じになど全く見えませんでしたが?」と私はツッコんでしまいました。

1950年代の映画黄金期を経て斜陽となる映画業界。専属にも関わらず送別会もなく映画を早々に退いたとサラッと書いているところも佐々木監督らしいと思いながら、斜陽になった映画業界の凄まじさを改めて思いました。かなり早い段階で東映のテレビを作る東映京都プロダクションへ移籍し、年も年なのでゆっくりとやっていこうと思っていたのも束の間、その後東映テレビ時代劇は数々のヒット作品を生んでしまい、そこに携わっていた監督の一人が佐々木監督で、『忍びの者』や東千代之介さん主演ドラマの『佐々木小次郎』をはじめ、栗塚旭さん主演の『新選組血風録』や用心棒シリーズ、『大岡越前』などを撮影し、市川右太衛門さん(『旗本退屈男』)、片岡千恵蔵さん(『軍兵衛目安箱』『世直し奉行』)、そして大川橋蔵さん(『銭形平次』)などが始まってしまい、役者さんたちからも佐々木監督指名で呼ばれては断れず、気がついたら500本も撮っていたそうです。

テレビ時代劇以外の作品もあるのですが、『残菊物語』という作品を監督した時は、ジャンルがメロドラマだったのですが「松竹時代の昔取った杵柄だ、絶対負けられない」と意気込んで作られたそうです。熱意が伝わって高視聴率、お茶の間を泣かせたそうです。この時なかなかのお年だったと思いますが、メロドラマへのこだわりがすごいので、時代劇より好きだったんだなと思いました。昔のテレビ時代劇の中でメロドラマの回は結構な率で佐々木監督だったりするのですけど、確かに、すごく上手。いかつい男の世界みたいな時代劇の中に突然小さな花が咲くような佐々木監督のメロドラマ時代劇は私は好きなのですが、それについての感想は話が長くなるので別の機会にいたします。

『悔いなしカチンコ人生』の本はずいぶん昔に発行されているので中古購入でしたが、購入した時に本の中に新聞の切れ端が2枚入っておりました。よくよく見ると佐々木監督の本について書かれた記事と、監督が亡くなったことを伝える記事でした。双方日付が書かれており、これを売った方か、もしくは、本を販売していた方が入れてくれたのかなと思いますが、こうした著者さんについてのちょっとしたおまけは大変嬉しいですね。大切にしたいと思います。今後も佐々木監督の映画をはじめ、著書も何度も見返すと思います。

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松元美智子 1996年少女漫画雑誌「ちゃお」デビュー/漫画家/イラストレーター/3DCGゲームアニメーター/書籍執筆/投資家/Python/UE5/最新刊「少女マンガの作り方」/Web「松元美智子クリエイティブブログ♡公式」で過去の漫画や制作に役立つ情報毎日投稿中/法政大学経済学部経済学科通信教育部生/メンタル心理カウンセラー

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