1925年時代劇映画阪東妻三郎さん主演「雄呂血」の魅力

1925年時代劇映画阪東妻三郎さん主演「雄呂血」の魅力

大正14年に公開され、今年で100周年を迎える古い映画にもかかわらず、
今なお人気のある作品です。


「世人…無頼漢(ならずもの)を称する者、必ずしも真の無頼漢のみに非らず。
善良高潔なる人格者と称せらるる者必ずしも真の善人のみに非らず。
表面善事の仮面を破り、裏面に奸悪を行う大偽善者。
亦、我等の世界に数多く生息する事を知れ…」


これは、映画の74分バージョンの最後に流れる活弁なのですが、
まさにこの映画のテーマを表しています。

とはいえ、阪東妻三郎さんの演技力、
中でも好きな女性に対する態度が少年のようで、
鼻の下を伸ばして見惚れてしまうなど、和むシーンも多く、
また阪東さんと群衆による長尺の大立ち回りなど、
重たいテーマに引きずられることなく、
非常にバランスの取れた大娯楽映画の出来に何度も観てしまいます。

阪東さんは役とはいえ、本当に「好き好きビーム」を出していて、
それが見てすぐわかるほどの感情表現ができるのは、
本当にすごい役者さんだなと感じます。

1925年阪東妻三郎さん主演「雄呂血」のあらすじ

久利富平三郎(阪東さん)は、家老の倅との喧嘩がもとで漢学塾を破門になり、密かに思いを寄せていた塾長の一人娘・奈美江からも誤解されたまま絶交され、無頼漢(ならずもの)と呼ばれる浪々の身となる。彼をかくまった顔役は町の人からも慕われる立派な親分だが裏の顔は極悪非道の大悪人であった。誰よりも善良でありながら世の中に受け容れられない自分と比べ、あまりの矛盾に怒りを感じる。そこへ、奈美江が病の夫と共に現れるが、悪親分の魔の手が奈美江に伸びた時、平三郎の怒りがついに爆発。役人も巻き込んでの大立ち回りへと展開する。

「雄呂血」について

1925年(大正14年)に設立された「阪東妻三郎プロダクション」の
記念すべき第1回映画作品です。

当時23歳の阪東妻三郎さんはすでにスターでしたが、
若い頃の作品が現存しているのは特に貴重です。

またこの映画は状態が非常によく保たれており、
第一回作品として思い入れが強かったためか、
フィルムを桐箱に入れて保管していたおかげで、
100年後の現在でも綺麗に観られるのはありがたいことです。

大正時代の映画には、現在見るみは白黒の二階調で画質の悪いものも多く、
また当時は映画を保存するという意識が薄く、
劇場公開が終わればそれまで。というのが一般的だったようです。

さらに戦争などによって消失・カットされた映画も多く、
そうした事情を踏まえると、「雄呂血」のフィルムが大切に保管されていたのは
非常に珍しいケースだったと思います。

しかし、「雄呂血」も検閲に引っかかり、タイトルの変更や映画のシーンが
大幅にカットされたうえでの上映だったそうです。
元のタイトルは「無頼漢(ならずもの)」だったそうですが、
これのどの部分が検閲に引っかかったのかは不明です。

「雄呂血」というタイトルも映画の内容とはあまり関係がなく、
タイトルのイメージだけで見ると少し違った印象を持たれるかもしれません。

「雄呂血」は現在2バージョンある。視聴方法

「雄呂血・74分バージョン」

元のフィルムを松田春翠さん(マツダ映画社)が譲り受け、1965年に再公開。
再公開時には、当時の時代劇映画スターたちも上映を観に訪れたという
話も残っており、そこからも阪東さんの「雄呂血」の人気ぶりがうかがえます。

私が手元に持っているのはこの「雄呂血・74分バージョン」ですが、
短い上映時間ながら内容が凝縮されており、繰り返し楽しめる
という利点があります。

また、マツダ映画社さんの活弁付き無声映画は
明るめの活弁が特徴で、聞き心地が良い点も気に入っています。

74分バージョンはDVD販売のみとなっています。

「雄呂血・101分バージョン」

2021年に「雄呂血」の4Kデジタルリマスター版の修復作業が開始されました。
公開当時は検閲によって大幅にカットされていましたが、
残されていたオリジナルフィルムから復元され、
74分から101分へと尺が伸びました。

2023年には時代劇専門チャンネルで101分バージョンが放送され、
同時に、4Kデジタル修復作業の裏側を語る特別番組も制作されました。

74分と101分のバージョンでは、活弁士も異なるようなので、
両方を視聴する楽しみ、作品が2倍楽しみになるという点でも、
非常に貴重で贅沢な映画です。

私自身はまだ101分バージョンを視聴していないので、
いずれぜひ見てみたいと思っています。

101分バージョンは現在、時代劇専門チャンネルで視聴できます。
Amazonでも、時代劇専門チャンネルの視聴が可能です。

阪東妻三郎さんの貴重な若い時の美しいお顔とスターぶりが存分に見れる「雄呂血」
おすすめの一本です。

74分バージョン
◾️Talking Silents3「雄呂血」「逆流」 [DVD] 
https://amzn.to/3T4TJnM

101分バージョン
◾️1925年阪東妻三郎さん主演「雄呂血」Amazon 時代劇専門チャンネル
https://amzn.to/4kY9hpF

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松元美智子 1996年少女漫画雑誌「ちゃお」デビュー/漫画家/イラストレーター/3DCGゲームアニメーター/書籍執筆/投資家/Python/UE5/最新刊「少女マンガの作り方」/Web「松元美智子クリエイティブブログ♡公式」で過去の漫画や制作に役立つ情報毎日投稿中/法政大学経済学部経済学科通信教育部生/メンタル心理カウンセラー

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