1931年時代劇映画「御誂次郎吉格子」に見るスター大河内傳次郎さん
床屋で髪と髭を手入れしてもらっている
泥棒・鼠小僧次郎吉役の大河内傳次郎さん。
座っているだけなのに、その姿がとても美しく、目が釘付けになりました。
役柄と大河内さんの持つ独特の雰囲気が合わさり、
妙な魅力を生んでいると感じます。
鼠小僧が床屋で大人しく手入れされている場面と、
少し童顔の大河内さんの姿が猫のように可愛らしいのですが、
着物姿で足を組むという、着物警官がうるさく言いそうなポーズを
破天荒な大河内さんがすると、 格好良く決まり、さらに気品まで感じさせる。
そんな 不思議な魅力に驚きました。
このポーズは誰にでも似合うものではないと思いますが、
大河内さんのスター性を垣間見た瞬間でもありました。
1931年時代劇映画「御誂次郎吉格子」について
この映画は昭和6年（1931年） に公開されたサイレント映画 です。
現存するフィルムは一部欠損していますが、DVD化されています。
完全な状態ではないものの、
見応え十分な素晴らしい作品であり、
戦争やGHQの検閲などの影響で多くの映画フィルムが紛失・消失するなか、
一定の尺を持つ唯一の作品として希少性が高いため、
一部欠損状態でもDVD化に値する作品だと思います。
視聴するとその魅力に何度も観たくなるほど病みつきになりますが、
なかでも主演の大河内傳次郎さんの不思議な魅力に
惹きつけられてやまない作品です。
1931年時代劇映画「御誂次郎吉格子」の概要
本作では、大河内さんの型破りな殺陣はなく、
鼠小僧が江戸から大阪へ逃亡した先で出会う 女性たちとの恋愛模様がメインです。
次郎吉と同棲しているお仙、
そして、鼠小僧の盗みが原因で貧しい暮らしとなった元武家のお喜乃に惹かれる次郎吉。
しかし、二人を食い物にするお仙の兄・仁吉という悪党がおり、
次郎吉は、この二人の女性を仁吉から救い出します。
本作は、鼠小僧・次郎吉をはじめ、
登場キャラクターたちの魅力が丁寧に描かれており、感情移入しやすい作品です。
クライマックスでは、大勢の役人に囲まれる鼠小僧を助けたくなるほどの
引き込まれる展開が待っています。
サイレント映画の魅力
サイレント映画では、 心理描写を仕草や表情で丁寧に表現しているため、
観る側が本能的に登場人物の心理を理解しやすいという特徴があります。
そのため、 一人一人の表現や仕草が非常に重要です。
冒頭で触れた大河内さんの、ただ座っているだけなのに惹きつけられるポーズ も、
鼠小僧という人物像を観客に伝えるために考え抜かれたものと思われます。
サイレント映画は キャラクターの心理状態に応じたポーズや表情が非常に豊かであり、
1コマたりとも見逃せないほど魅力にあふれています。
その結果、何度も繰り返し観てしまうという “サイレント映画沼” に陥るのです。
江戸時代の床屋について
この映画には江戸時代の床屋のシーン が登場します。
江戸時代の床屋を描いた映画は珍しいと思うので、ご紹介します。
映画を見ると、床屋の店内は入り口を入った土間のような場所にあるようです。
土間から室内へ上がる 「上がり框（あがりかまち）」 のところに
お客さんが腰をかけ、
店員がその周りを動きながら ちょんまげを整えたり、
さかやき（月代）や髭を剃ったりする 様子が描かれています。
店内には 床屋のアシスタント もおり、
二人がかりで 大河内さん演じる鼠小僧・次郎吉の手入れをします。
また、店内には お客さん以外にも何人かの出入りする人がいて、
それぞれ店員と話をしたり、ほかのお客さんが会話に加わったりと、
様々なやりとりが繰り広げられています。
こうした描写から、賑やかな江戸時代の床屋の風景を垣間見ることができます。
1931年時代劇映画「御誂次郎吉格子」の視聴方法
現在は DVD購入のみで視聴可能です。
DVDには「御誂治郎吉格子」のほか「 弥次喜多道中記 尊王の巻」「弥次喜多道中記 鳥羽伏見の巻」も
収録されております。
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