1928年時代劇映画「浪人街 第一話 美しき獲物」の魅力

1928年時代劇映画「浪人街 第一話 美しき獲物」の魅力

映画会社の諸事情によりスター不在、
20歳前後の無名の若手俳優たちと製作陣が映画を制作するという
不運な状況ながら、封切られると日本全国で大ヒットを記録、
同年のキネマ旬報で1位を獲得した映画です。

「浪人街」は、浪人たちが住む街(長屋)での出来事を描いており、
浪人や街の住人たちはだらしなく、しょうもない性格なのですが、
どこか憎めず、浪人たち vs 旗本集団との派手な殺陣がクライマックスを飾ります。

歌舞伎系スターのような様式美のある剣戟ができるわけではありませんが、
若者ならではの運動能力の高さ、素早さ、勢いで迫力が出ており、
さらに映画界のサラブレッド、当時20歳のマキノ正博監督の
センスとテンポの良さが加わり、今見ても素晴らしいと感じる映画です。

若手俳優たちには、日常生活の延長のような自然な演技をさせたようで、
その結果として、イラストに描いたような不良の乗馬シーンなど、
他の時代劇では見たことのないようなスタイルが誕生しました。

こうした二度見するようなエピソードがふんだんに含まれており、
つい何度も見てしまう沼にハマる映画です。
いつの時代も若者が新しい流行を生み出してきたのだと、
あらためて感じさせてくれる一本でもあります。

1928年時代劇映画「浪人街 第一話 美しき獲物」について

この映画は現在、第一話のラスト8分、第二話が72分、
この2本のみが視聴可能です。

「浪人街」は1928年に全4話が制作・公開されたようですが、
残りの2話の現存状況は不明です。

とはいえ、視聴可能な2本だけでも十分楽しめる作品です。
第一話が8分しか残っていないのは少々残念ですが、
不良乗馬シーンなど、貴重な場面が含まれており、
そこだけでも何度見ても面白いシーンです。

72分の第二話では、浪人街に住む浪人や住人たちの日常が
たっぷりと描かれています。
登場人物は、性格の良い面と「ちょっとこれは……」と思うような面を
あわせ持っているのですが、良い面がしっかり描かれていることで中和され、
結果的に人間として魅力的に見えるように作られています。

その“イマイチな面”と“良い面”のバランスの取り方が絶妙で、
登場人物たちは忘れられないキャラクターになっています。
映画を見終えた後には、「スター不在」と言っても、
それがどうした?と言いたくなるほど満足感の高い作品であり、
本当にすごい映画だと思います。

「浪人街」が無名の新人たちで制作されることになった経緯

本作の制作はマキノ・プロダクションですが、
マキノ正博さんの父・マキノ省三監督が手がけた映画「実録忠臣蔵」には
多くのスター俳優が出演していたものの、トラブルや事件が多発。
この作品をきっかけに、スター俳優たちがマキノプロを辞めてしまうという
出来事が起こり、「浪人街」は新人たちで制作することになった背景があるようです。

マキノ正博監督について

私はこの監督が大変好きで、
これまでブログで紹介してきた時代劇映画の多くも
マキノ正博監督作品です。
(阪東妻三郎さん、嵐寛寿郎さん、大河内傳次郎さんなど)

マキノ正博監督は、監督になる前は
父・マキノ省三監督の作品などに出演していた俳優でした。
俳優としての彼の作品も見たことがありますが、
俳優としても素晴らしい演技をされています。

18歳から監督業に転じ、「浪人街」は監督3作目とのこと。
もともと俳優経験があり、さらに家が映画プロダクションという
映画漬けの日常の中で育った環境から、
映画センスに優れているのも納得です。

そんな映画センスの塊だった20歳のマキノ正博監督は、
この映画の大ヒットでスター不在だった
マキノプロダクションの窮地を救い、
その後、長い映画監督人生に入ります。

また、無名だった新人俳優たちも本作をきっかけに有名になっていき、
そうした明るい話題も含めて、視聴後には楽しい気分になれる映画です。

1928年版映画「浪人街」の視聴方法

現在はDVDでのみ視聴可能です。

下記にある「恋山彦」、「決闘高田の馬場」はマキノ正博監督です。





最新情報をチェックしよう!
>松元美智子クリエイティブブログ💖公式

松元美智子クリエイティブブログ💖公式

松元美智子 1996年少女漫画雑誌「ちゃお」デビュー/漫画家/イラストレーター/3DCGゲームアニメーター/書籍執筆/投資家/Python/UE5/最新刊「少女マンガの作り方」/Web「松元美智子クリエイティブブログ♡公式」で過去の漫画や制作に役立つ情報毎日投稿中/法政大学経済学部経済学科通信教育部生/メンタル心理カウンセラー

CTR IMG