片岡千恵蔵さんの演じ分けが凄すぎる!1936年映画『赤西蛎太』|原作者志賀直哉さんも絶賛した名作の魅力
1936年の映画『赤西蛎太』(あかにしかきた)では、片岡千恵蔵さんが主人公の醜男と悪役の美男の二役を演じているのですが、別人に見えるほど違う演じ分けが素晴らしいです。
不細工な赤西蛎太は丸顔ゲジゲジ眉毛で鼻横に大きなホクロがあり、ヨレヨレの着物を着た野暮ったく冴えない田舎侍。一方、原田甲斐は仙台藩士の美男です。二人は顔の輪郭も目つきも違い、蛎太は丸顔にまん丸お目々、原田はシュッとした輪郭に鋭い目つきをしています。
原田役での片岡さんは、戦前頃までに演じていた浅野内匠頭などの殿様系の役で見られた綺麗な役どころで、私にはお馴染みの片岡さんでした。一方で、蛎太のような不細工ぶりを演じるのは皆無なので驚きました。本当に全然違う顔つきで、片岡さんを知らない方だと別人が演じているのではと思うほど違います。
この二役の外見の違いぶりが素晴らしく、この映画が人気の理由の一つだと思います。また、原作者の志賀直哉さんがこの映画を見て絶賛したということも納得です。
さらにこの映画には見どころとなるシーンがあり、原作には「行燈と将棋をする蛎太」という描写があります。将棋が好きな蛎太は、定跡の本を片手に一人で将棋を指すのが好きな男です。志賀直哉さんの小説は好きなので『赤西蛎太』の小説も読んでいましたが、「行燈と将棋を指す」とはどういうことなのかわからず疑問を感じていたのですが、映画を見て納得しました。行燈の前で定跡の本を持ちながら将棋を指している蛎太の姿を見ると、まるで行燈が蛎太の将棋相手みたいに見えるのです。
映画では、赤西蛎太がどういう人物なのかを説明する際に、第三者が会話の中で「あいつは今頃行燈と将棋をしている」と話します。すると聞いている方が「ええ?行燈と?」と疑問を感じたふうに言います。この「ええ?行燈と?」という発言が、小説を読んだ読者が感じた感想そのままの声でもあったと思います。そして、行燈と将棋を指す蛎太のシーンが映し出されます。映像で見ると「なるほど!」と感心してしまったのですが、非常に滑稽な姿にも感じられ、蛎太の「イケてない感」も出してしまうという、とても印象に残るシーンでした。

また、原田甲斐はラストで伊達兵部を斬りつけるのですが、その時、二人で激しめに動き回るので髪が乱れます。普段の原田甲斐は月代のないちょんまげ姿なのですが、斬り合いの際に、ちょんまげが後ろに垂れてポニーテールになってしまい、片岡さん演ずるイケメンぶりが倍増してしまったという「おいしい一幕」がありました。色っぽいというか、セクシーでした。イケメンは乱れ髪が似合いますね。
原田甲斐も最後は斬られてしまうのですが、歌舞伎のように派手な体の動きをして命果てる演出で、そこも原田の美男ぶりに似合っており、最後の最後まで感心した作品でした。本作品は片岡さんのこの二面性がいちばんの見どころだと思います。
お話自体は伊達騒動を下敷きにした内容で、赤西蛎太は伊達家に送り込まれたスパイです。伊達騒動の中心人物である原田甲斐の謀反を暴くために送られた蛎太ですが、決して重い話ではありません。蛎太と伊達家の腰元・小江(サザエ)との恋や、原田家に送られたスパイの家来・銀鮫鱒次郎(ぎんざめ ますじろう)との友達のようなやり取り、さらには蛎太が腸捻転を自力で治す(刀を腹に刺し腸を手で治す)など、蛎太の魅力が際立ち、楽しく見られる作品でもあります。
『赤西蛎太』の視聴方法
日活作品で、Amazon Prime会員なら無料で視聴できると思います(非会員の場合は有料視聴になるかもしれません)。 志賀直哉原作の『赤西蛎太』は短編小説集に収録されています。
映画『赤西蛎太』
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志賀直哉原作『赤西蛎太』
小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫) 文庫
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