1940年映画『嵐に咲く花』|黒川弥太郎さんの下駄履きアクションが凄い!山田五十鈴さんと魅せる、幕末動乱の切なくも心地よい恋愛映画
黒川弥太郎さん主演『嵐に咲く花』
慶応4年〜明治にかけての動乱期、慶應義塾を脱走し会津の戦争に身を投じた蜆平九郎(しじみ へいくろう)を演じた黒川弥太郎さん。この方はちょっと小柄なのですけれど、男前の顔と真面目そうな性格で安定感があり、上役みたいな役をやらせるととても映えます。堅物そうにも見えるのですが、意外にも抜群に良い運動神経をお持ちで、真面目な堅物が軽快なチャンバラをする姿のギャップ映えに心を掴まれます。
チャンバラが上手いなら時代劇俳優では普通なのですけれど、黒川さんの場合、大きく動きながら素早いので、非常に映える。さらに、下駄を履いてのチャンバラやケンカも草鞋の時とスピードが変わらないので驚きます。むしろ早くなっている?とさえ見えます。バランス感覚が相当良いのだろうと思います。
『嵐に咲く花』では、集団で殴り合いのケンカシーンが数回あるのですけれど、黒川さんは着物で下駄を履いているのにも関わらず、すごいすばしっこく走り、早い投げ技をバンバン繰り広げ、さらには殴る時には体を大きく使って相手を思い切り殴り飛ばす。真面目そうな姿からは想像もできないほどケンカ慣れしているような動きで驚きました。着物、下駄履きでここまで綺麗に素早く喧嘩できる人も珍しいです。さらに、喧嘩していて警官の追手から逃げるために、とある屋敷の外で1階から2階へ登り、窓から入って身を隠すシーンがあるのですが、何度も言いますけれど、下駄を履いているのに、登って窓から入るまでが早すぎてびっくりしました。登りやすいように1階部分には木箱や固そうな荷物が置いてあるとはいえ、猫のように早かったです。

この映画は戦争〜明治期に出会った男女、優秀な蜆(黒川さん)と大庄屋の娘・おけい(山田五十鈴さん)の恋の話でもありますが、蜆が戦争で目を怪我し、療養した宿で二人は出会います。おけいは疎開先のような一時避難で訪れ、目が不自由になった蜆の看病をし、二人はお互いを思うようになります。目の包帯が取れる時に、おけいは蜆の元を離れ、一緒に避難していた手伝いたちと宿を後にします。蜆はその後を追うも見つからず、別れの辛さで生活が荒れ、数年後、蜆は横浜で不良の生活をしておりました。
そんな中、おけいも横浜を訪れますが、手伝いや村の者たちと日本を離れアメリカで生活をするためでした。蜆が喧嘩をして警察から逃げるために身を隠して忍び込んだ洋館に、おけいが宿泊しており、二人は再会します。蜆はおけいと出会ってはいるけれど、姿を見ていないため分かりません。おけいは知っているので蜆の名を呼び、一度会ったことがあることを告げます。それ以上は語らなかったため、蜆はどこで出会ったか分かりませんが、後日おけいだと気がつき、二人は晴れて結ばれる……と思いきや、おけいはアメリカへ旅立つため、また別れることになると言います。
蜆は一緒にアメリカへ行くと言いますが、おけいはそれを止め、優秀な蜆は日本で生活をするべきだと言います。蜆もそれ以上はおけいを追わず、二人は再び別れることになります。これで物語は終了するのですが、綺麗な感じの恋愛模様と、蜆が慶應の塾長・福澤諭吉(大河内傳次郎さん)から「英語のできる人を探している」という仕事先の助言をもらい、三度、蜆とおけいの出会いがあるのでは?というエピソードが入り、今後を期待させる終わり方で締めくくりました。
お互い好いているにも関わらず、幕末の動乱に巻き込まれ、生活を立て直すために別れなければならなかった男女ですが、黒川さんと山田さんの美男美女が綺麗な恋模様を見せてくれ、また周りの人たちへの配慮、思いやりも描いている作品でもあり、見ていて非常に心地よい恋愛映画です。何回か見てしまっているほど気に入っている映画です。