松谷みよ子『龍の子太郎』|児童文学に込められた民話の力と現代へのメッセージ

松谷みよ子『龍の子太郎』|児童文学に込められた民話の力と現代へのメッセージ

私は大学の経済学部に在籍しておりますが、
他学部の科目もいくつか履修することができるので、
25年後期はいくつか受講することにしました。

その中の一つに「児童文学」があります。
授業では夏目漱石を扱うのですが、学んだことを活かして
夏目以外の児童文学でリポートを書く課題があります。
松谷みよ子さんの『龍の子太郎』と、参考資料として『民話の世界』を読みましたら、
非常におもしろくて、過去最速でリポートが仕上がりました。
私はもともとこちらの世界の人間だと思っているので、
書きどころやポイントがすぐに分かったのだと思いますが、
改めて児童文学は素晴らしいと感じました。
経済学部は超現実的な世界なので、心が洗われるような衝撃がありましたね。笑

児童文学には空想的な面がありますが、決して夢物語ではなく、
その芯には現代の問題やその解決策が含まれています。
たとえば、現代でいうところの熊問題や米騒動、自然災害など、
大きな事件や社会問題を扱っているのです。
それを空想の世界に置き換え、
小さな主人公がどうやって問題を解決していくか、
旅の途中で出会うキャラクターたちに影響を受けながら、
最終的に解決へと辿り着く――そんな構成になっています。

作者の松谷さんは、もともと民話に興味を持ち、採取をするようになり、
そこから『龍の子太郎』が生まれました。
やはり物語を作る根源には、
「これを世の中に出してあげたい」「広めたい」という使命のような思いがあり、
それが後々まで語り継がれる作品を生むのだと思いました。

他学部の授業を受けてみて、本当によかったです。

『龍の子太郎』のあらすじ

太郎はおばあさんと険しい山の中で貧しい生活をしています。
実は太郎の母親は、やむを得ない事情で掟を破ったために龍になってしまいました。
太郎が成長したとき、おばあさんからその話を聞き、
龍になった母親を探す旅に出ます。

旅の途中で太郎は森の動物たちと仲良くなり、
天狗に出会って百人力を授かり、
人間に悪さをする鬼たちを退治します。
また、鬼にさらわれた太郎の唯一の友達・あやを助けたり、
がめつそうな婆さんのもとで米を育てたりもします。

そして九つの山を越えた湖で、ついに龍になった母親と再会します。
母親が龍になったのは、険しい山の環境で食料が十分に育たず、
母親をはじめ多くの山の住民は常に飢えており、
食料は皆で分けることが決まりでしたが、妊娠中の母親は
どうしてもお腹が空いて仕方がなくイワナを三匹食べたところ
龍になってしまったのです。

太郎は、どうすれば皆が飢えずに美味しい白米をお腹いっぱいに食べられるかを考え、
母龍の背中に乗ってともに山を切り崩し、
湖の水を引いて田んぼを作りました。

不思議なことに、母龍は元の人間の姿に戻り、
太郎は母親と再び暮らし始め、最後はあやと結婚してめでたしめでたし。

というお話です。

このお話は、作者の松谷さんが採取した民話に影響を受けていますが、
それにしても、これほど内容の濃い物語を児童文学として描く
松谷さんの創作力、文章力は驚異的です。
「書きたいから書ける」という次元ではなく、間違いなく天才だと思いました。
本当に素晴らしい作品で、
「物語の基本とは何か」を学ぶための一冊としてぜひおすすめしたいです。

青い鳥文庫の『龍の子太郎』は対象年齢が小学校中〜高学年なので、
ひらがなが多いですが、とても読みやすいです。

絵本版もありますが、内容が短縮されてあらすじのようになっているので、
青い鳥文庫版の『龍の子太郎』がおすすめです。
私は読む本がたくさんあるため、都合上図書館で借りましたが、
購入してもお手頃です。

初版は1980年ですが、増刷が続いていることにも驚かされます。

◾️龍の子太郎 (講談社青い鳥文庫 6-5) 新書 著:松谷みよ子
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◾️民話の世界 (講談社学術文庫 2251) 文庫 著:松谷みよ子
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松元美智子 1996年少女漫画雑誌「ちゃお」デビュー/漫画家/イラストレーター/3DCGゲームアニメーター/書籍執筆/投資家/Python/UE5/最新刊「少女マンガの作り方」/Web「松元美智子クリエイティブブログ♡公式」で過去の漫画や制作に役立つ情報毎日投稿中/法政大学経済学部経済学科通信教育部生/メンタル心理カウンセラー

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